アーカイブック2016発表……の前に!

アーカイブック」という言葉を提唱しようと思う。どういう意味かというと、「何らかのコレクションをまとめた書物」、あるいは「何らかの蒐集家がコレクションについて書いた書物」のことだ。アーカイブ+ブックでアーカイブック。

フリースタイル』という雑誌がある。ほぼ季刊くらいのペースで発行されているこの雑誌に「One, Two, Three!」というコーナーがあって、数人のライター、作家、編集者らが気になるポップカルチャー(小説、漫画、映画、演劇、音楽などなんでもよい)を3つ選んで紹介するというものだ。

フリースタイル34 特集「THE BEST MANGA 2017 このマンガを読め! 」

フリースタイル34 特集「THE BEST MANGA 2017 このマンガを読め! 」

その執筆陣にぼくも加えてもらっているのだが、ぼくはそこへさらに自分なりの縛りを設けてセレクトしている。それが「アーカイブ物かどうか?」ということだ。ま、例外はあるが、できる限り何かを集めた作品を取り上げるよう務めている。なぜそんな面倒臭いことをしているのかといえば、そりゃぼくがコレクター大好き! だからだ。

これは拙著『無限の本棚』のあとがきでも書いたことだが、昔からコレクターが出版した本は手当たり次第に買ってきた。いまでも書店でその手の本を見かけるとつい手に取ってしまう。そして、そういうものが日々自分のデスク周りに積み上がっていく。ならば、この分野の年間ベストを決めるのも楽しそうだな、と思った。そんなことができるのは、ぼくくらいのものだろうとも。

無限の本棚

無限の本棚

さすがにそうしたアーカイブック、もしくはそれ的なものをすべて網羅するのはアンテナ的に限界があるし、経済的にも無理があるので、ぼくの目に止まって購入したものしかエントリーできない。でも、この企画は自分のためにやってることだからそれでいいのだ。「あの本が入ってねえ」とか言われても知らんがな。

というわけで、2016年のベスト・オブ・アーカイブックを発表……する前に、ここで去年(2015年)のアーカイブックを振り返ってみたい。本当はこの企画は去年からスタートしようと思ってたんだよね。でも、いろいろ雑事に追われているうちに年を越しちゃったので、そのまま放ったらかしにしていた。それで、ようやくいまになって重い腰を上げたというわけだ。

もったいぶらずにスパーンと発表する。ベスト・オブ・アーカイブック2015!

  1. 1979年の歌謡曲(スージー鈴木/彩流社/10月20日発売)
  2. 痴女の誕生(安田理央/太田出版/4月1日発売)
  3. 神戸、書いてどうなるのか(安田謙一/ぴあ/12月1日発売)
  4. ニッポン大音頭時代(大石始/河出書房新社/7月24日発売)
  5. デスメタル アフリカ(ハマザキカク/パブリブ/10月1日発売)
  6. 暇なマンガ家が「マンガの描き方本」を読んで考えた「俺がベストセラーを出せない理由」(上野顕太郎/扶桑社/7月31日発売)
  7. ワンコイン古着(中嶋大介/本の雑誌社/11月24日発売)
  8. 古本屋ツアー・イン・首都圏沿線(小山力也/本の雑誌社/10月22日発売)
  9. ヘンな本大全(風来堂、他/洋泉社/3月4日発売)
  10. 本で床は抜けるのか(西牟田靖/本の雑誌社/3月10日発売)

※うっかり『痴女の誕生』を入れちゃったけど、これ2016年でしたね。

1979年の歌謡曲 (フィギュール彩)

1979年の歌謡曲 (フィギュール彩)

音楽に限らず様々なカルチャーはだいたい10年区切りで論じることが多いが、本書では歌謡曲を1979年という年代の変わり目に焦点を当てて切り取ったところが新しい。その企画性に負けることなく、読めば幾つもの発見が得られる。スージー氏の音楽論は、ブログを読んでいても常にハッとさせられ、まったくもって目のウロコ泥棒である。


神戸、書いてどうなるのか

神戸、書いてどうなるのか

ロック漫筆家・安田謙一氏が神戸にまつわる108篇の思いつきを集めた本。5年前に神戸で初めて会ったとき一緒に食べたカレーそばの話から始まり、ラストはぼくとの出会いのエピソードで終わる。つまり、これはぼくにとって特別な本なのだ。


4位以下にも素晴らしいアーカイブックが集まった。『デスメタル アフリカ』が話題を集めたのはまだ記憶に新しい。“古ツアさん”こと古本屋ツアー・イン・ジャパンの小山力也氏の快進撃もあって、とくにコレクター向け書籍を専門にしているわけでもない本の雑誌社の本が3冊もランクインしたのはおもしろい結果だった。

というわけで、「ベスト・オブ・アーカイブック2016」の発表は、12月29日となる予定。

12/20(火)は千駄木で本年最後のCRAZY GROOVE DONUTS!

今年の1月から千駄木のロックバー「Bar Isshee」でスタートしたCRAZY GROOVE DONUTS(毎月第3火曜の夜8時からやってるDJパーティー)も、いよいよ12回目を迎えます。毎月1回だからカウントしやすい! 12月は今年最後ということで、ゲストDJをお招きしてさらに盛り上げてもらいます。

一人目は、2月にゲストで出てくれた珍盤コレクター仲間の森成之さん、二人目は8月にゲストで出てくれたvvvxxxさん、そして三人目は古本トリオでもおなじみ安田理央さん。三者三様のDJプレイを見せてくれると思います!

今回はBar Issheeに新兵器の卓上コンロが導入されたということで、年末だし肉でも焼いて食おうじゃないかと「ブロック(肉)パーティー」ということになりました。でかい肉を焼きながら、愉快な音楽に浸ろうという寸法。それから、新宿御苑のバー「浮かぶ」ママ、シブメグちゃんのフード販売もあります!

パーティーの最後は、無謀な試みとして「BtoB百人組手」をやろうかと思っています。ゲストがかけた曲にちなんだテーマ(タイトル、ジャンル、作曲家など)に関連する曲をとみさわが次々つないでいくというもの。ゲストのお三方以外に、レコード持ち込みの飛び入りも歓迎します。どんな曲でも受けて立つ! 

■会場:
  Bar Isshee(千駄木)
  東京都文京区千駄木3-36-11 千駄木センチュリー21 地下1階
 
■料金:
  Charge:500円 + 1ドリンク以上のご注文をお願いします。

■フード:
 ・特製ナポリタン、ブロッコリー&新生姜タルタルソース添え(有料)
 ・ブロック肉バーベキュー(こちらはフリー)

■タイムテーブル:
 19:00 - 19:40 とみさわ(和ものイロイロ)
 19:40 - 20:20 森茂之(珍歌謡)
 20:20 - 21:00 vvvxxx(歌謡曲
 21:00 - 21:40 安田理央(和ニューウェーブ
 21:40 - 22:20 とみさわ(テクノ歌謡〜漫画ジョッキー)
 22:20 - 23:00 BtoB百人組手

というわけで、ご来場をお待ちしてまーす。

大阪・なんば、味仙の担仔麺

今年の5月に大阪へ行ってきた。千日前にある味園ビル内「紅鶴」でトークライブに呼んでいただいたからだ。まあ、その話は別の機会にするとして、せっかく大阪まで行ったのだから、仕事のついでにその土地ならではのラーメンを食べておきたい。ぼくの脳と胃袋は、常にそう考えるようになってしまっている。

名古屋には、味仙(みせん)という中華料理屋があって、そこの店主が発明したという台湾ラーメンが気絶するほどうまい(自分好み)という話は以前書いた。それ以来、台湾ラーメンのトリコになったぼくは、日本各地で「台湾ラーメン」を名乗っているものを食べ歩いたりしているのだが、最初に食べたアレに敵うものは一杯も見当たらない。やはり名古屋の味仙じゃなきゃダメなんだ! と、やはり別件で大阪へ出かけたときに、わざわざ帰京の新幹線を名古屋で途中下車したほどだ。

ところが、そこでぼくは失望した。そのときは名古屋の今池本店で台湾ラーメンを食べたのだが、最初に食べて感動したあの味とはまるで別物だったからだ。「味仙の台湾ラーメンは支店によって味が違うらしい」とは、きいていた。それでも、本店なら矢場店よりさらにおいしいに違いないだろうと、無意識に思い込んでいた。ところがそうではなかった。これ、わりと衝撃的でしたね。そうか、単に矢場店の味付けがぼくの好みにドンピシャリだっただけなのかー。

それ以来、ちょっと気持ちが冷めてしまって、台湾ラーメンを過剰に追求する気持ちはなくなってしまった。

で、ここで話は最初に戻る。5月に大阪へ行きまして、なんば周辺に何かうまい麺はないものか……とジタバタしていたところ、ぴあ関西のWさんから「味仙(あじせん)という店の担仔麺がうまいですよ」と教えていただいたのだ。ぼくは基本的にうまいものの情報を他者から提供されても、それに素直に従うことはない。味覚なんて人それぞれで、誰かがうまいと思ったものでも、それをぼくが同じようにうまいと感じる保証はまったくないからだ。

それでも、そのときは気まぐれで行ってみようと思った。他に行きたい店もなかったし、読みは違うけど「味仙」という店名が大阪にもあるのがおもしろいじゃないか。

店は心斎橋にもあるが、なんばこめじるしのところにも「なんこめ店」という支店がある。泊まっているホテルからはそちらが近い。夕方6時の開店に合わせて店に行き、一番乗りの客として「担々麺」を頼んでみた。

食べ終わってボーッとしてしまった。うますぎた。カンッッッペキに好みの味だった。スープは台湾風(?)のあっさりした味で、ラー油がピリリとした辛さを引き受けていて、ひき肉がコクを加える。スープの表面に散っているネギのようなものは、細かく刻んだセロリだ。これがシャクシャクした歯ごたえで、とてもいいアクセントになっている。ぼくは大阪へ行ったときはいつもなんばを拠点にするので、これはもう毎回ここで一食とることが決定だ。

8/16は千駄木でWバースデイバッシュ!

平日の昼間からTシャツに短パンで街をふらふら徘徊してラーメン食ったりビール飲んだりレコード掘ったり古本めくったりしていても時間さえ経てば人間って奴ぁ自動的に歳をとる。8月3日、こんなわたくしでも55歳になりました!

   

そんな自分を自分で祝うために、千駄木Bar Issheeで月イチやらせてもらってるDJパーティー「CRAZY GROOVE DONUTS Vol.8」を、勝手にバースデイバッシュとすることにしました。当日はぼくと、さらに飲み友達であり音楽友達でありラーメン友達でもあるタムラ(@vvvxxx)くん(8/11生まれ)との合同誕生会ってことで、2人で交互にDJします。前半はNEW WAVE、後半は歌謡曲で、それぞれの愛する名曲をいっぱいかけるよ!

   

誕生日プレゼントとか、そういうお気遣いはまったく無用です。 とにかく遊びに来てくれるだけで嬉しいです! ただし、会場はBarですので、お酒の持ち込みはダメね。1杯だけでもなんか飲んでって。

   

それと、今回は新宿御苑“例のプール”からすぐ近くでお馴染み、Bar浮かぶの2代目ママ・シブメグちゃんがフードを用意してくれます。Bar Issheeはいつもフードの持ち込みは自由で、この日もOKだけど、浮かぶママのフードもおいしいよ!

   

■会場:
  Bar Isshee(千駄木)
  東京都文京区千駄木3-36-11 千駄木センチュリー21 地下1階
 
■料金:
  Charge:500円 + 1ドリンク以上のご注文をお願いします。
 
■タイムテーブル:
  20:00〜 とみさわ(40min. ラウンジDJ)
  20:40〜 vvvxxx(40min. NEW WAVE
  21:20〜 とみさわ(40min. NEW WAVE
  22:00〜 vvvxxx(30min. 歌謡曲
  22:30〜 とみさわ(30min. 歌謡曲
  23:00 終了予定

というわけで、皆さんよろしくね。友達が少ないという現実を突きつけられるのはダメージでかいので、とにかく迷ってるなら来て! 楽しませるから!

どうでもいいことで生きていく

おかげさまで『無限の本棚』を出版して以来、各方面から取材、イベント出演、ラジオ出演などのお話をいただきまして、忙しい日々を送ってます。どうせすぐに波は引いていくだろうけど、とりあえず注目されてるうちが花なのよ、というわけで、時間の許すかぎり、依頼には応えようと思います。ちなみに、いちばんうれしいのは原稿依頼です。

あ、でも、たぶん呼ばれるはずだよな〜と思っていたイベントに出演依頼どころかご招待すらされなかったので、おれもまだまだ無名だな〜と気を引き締めている次第です。この「もっと知名度を上げたい!」という欲求と、マニタ書房を始めたときに「これからは世の中の役に立たないことだけをして生きていく!」と決意した気持ちは一見矛盾するようですが、その均等な着地点は「どうでもいいことの王者」ってことでしょうかね。


▲『無限の本棚』表紙写真の撮影風景

3/22新刊『無限の本棚』が出るむげ〜ん。

すっかり放置しっ放しで、たまに更新されたかと思えば宣伝ばかりになってしまっている当ブログ「蒐集原人」なのですが〜、凝りもせずまた宣伝のために更新するのです!

とみさわ昭仁の書き下ろし新刊が、3月22日にアスペクトより刊行されます。タイトルは『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』というもので、小学生のときに酒ブタ(日本酒のキャップ)を集めることからコレクションの道に足を踏み入れたぼくが、以後、ミニカーやら漫画本やら古鍵やら顔出し看板やら廃盤レコードやら人喰い映画DVDやらの様々なコレクション活動を経てゆくなかで見つけ出した、前代未聞の蒐集論です。

皆さんは、何かをコレクションする人というのは、「蒐集欲」が強い人だと思ってますよね? そして「蒐集欲」というのは、すなわち「物欲」であるとも思っていることでしょう。ところが、そうではなかったのです。

自分で物を集めることも大好きだけど、それ以上に、何かを集めている人を見るのが好きなぼくは、コレクションにまつわる本なら手当たり次第に読んできました。でも、蒐集の本質を解き明かしてくれている本は1冊もありませんでした。本書では、おそらく史上初めて「人が物を集めたくなるときの心理」を分析し、蒐集欲の本質を解き明かしています。

ぼくはことあるごとに「エアコレクター」という概念を提唱してきましたが、いまひとつわかりにくかったこの考え方も、本書を読めば納得がいくことでしょう。ぼく自身もよくわかっていなかった。でも、2012年に自分の理想とする古書店「マニタ書房」を開業したことで、すべてが見えたのです。

2012年に美術出版社より『人生のサバイバルを生き抜く映画の言葉』という本を出して以来の新刊となります。『人生の〜』は最初に20世紀フォックスと美術出版社による企画ありきの本だったので、あまり自分の著書という感じはしません。その点でも、今回の『無限の本棚』は、54年間の人生を通じて考え続けてきたことをすべて書き切ることができたので、感慨もひとしおです。

人生のサバイバルを生き抜く映画の言葉

人生のサバイバルを生き抜く映画の言葉

2015年度映画ベストテン

昨年公開された映画の私的ベストテンを「映画野郎メルマガ」2016年1月8日 vol.380に寄稿したけれど、無料メルマガなのでこちらにも同じものをアップしておく。

01位:グリーン・インフェルノ
02位:マッドマックス 怒りのデス・ロード
03位:カリフォルニア・ダウン
04位:ピクセル
05位:皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇
06位:野火
07位:ストレイト・アウタ・コンプトン
08位:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
09位:チャッピー
10位:キングスマン

■総評:
 イーライ・ロスがやってくれた!『グリーンインフェルノ』は人喰い映画の復権だけに留まらず、野蛮の逆襲エンターテインメントとしても一級の輝きを放つ。見どころは大麻にまつわる脚本の妙。どこまでも瑞々しいジャングルと、その中に立つ人食い人種ボディペイントによる緑と赤のコントラストは、映画史に残るビジュアルイメージだ。
『マッドマックス 怒りのデスロード』はオールタイムではそれほど上位には入らないが、2015年度の映画としては不満点を探すほうが困難な作品なので、この順位に置いた。
カリフォルニア・ダウン』はアトラクションとしての映画を徹底的に追及した仕上がりで、可能な限り大スクリーンで観るべき映画。
 今年は『スライ・ストーン』『ジェームス・ブラウン』『ラブ&マーシーブライアン・ウィルソン)』など音楽映画が豊作だったが、なかでも『ストレイト・アウタ・コンプトン』でトドメを刺された。
スター・ウォーズ フォースの覚醒』は、よかったけれどベストテンには入らず。とても期待していた『孤高の遠吠』は、本物の不良少年たちの輝きをまるで活かせていない演出にがっかり。『クリード チャンプを継ぐ男』も楽しみにしていたが、これは〆切りまでに見られずじまい。もし見ていたら『キングスマン』はベストテン落ちしたかも。