2012年にとみさわが見た劇場公開映画のベストテンを記録しておく。
- 孤島の王(原題:Kongen av Bastoy/監督:マリウス・ホルスト)
- これまで見てきたなかでずば抜けてパンクな映画。パンクというのは過激という意味じゃない。持たざる者の魂の叫びだ。終盤以降の展開に血が沸騰した。噴出する怒りと獣に堕ちない理性が拮抗する。10代の頃の自分と50歳になったいまの自分が映画館の暗闇で闘った。2012年最高の一作。
- 第九軍団のワシ(原題:The Eagle/監督:ケヴィン・マクドナルド)
- 歴史上の謎とその真相、1対1の決闘、集団による戦闘、飛び道具、肉弾戦、追跡行、奇襲、生け贄、自己犠牲の精神、友情……。男子激燃え要素を山ほど詰め込んで114分におさめた手腕は見事と言うしかない。
- ザ・ウーマン(原題:The Woman/監督:ラッキー・マッキー)
- 原作にあった背景設定を大幅に刈り込んでしまったために、“野生の人喰い女”という存在の唐突感が一層際立ち、えも言われぬ迫力の映画が誕生した。狂気と暴力の果てに訪れる、爽やかだかなんだかよくわからない叙情が大変な感動を生む大傑作。
- ザ・レイド(原題:The Raid/監督:ギャレス・エヴァンス)
- 悪党マンションにカチ込みかける警官隊。ボスは最上階。住人のほぼ全員が敵。エレベーターから、窓から、天井の穴から、壁の隙間から襲いかかってくる四面楚歌。ガンとシラットと立体的アクションのつるべ打ち。102分まったく無駄なしで、料金あたりの娯楽濃度は抜群に高い作品。
- アイアン・スカイ(原題:Iron Sky/監督:ティモ・ブオレンソラ)
- この世にタブーなんてないのではないか、と思わせるほどにデタラメかつ痛快な出来で、隅から隅まで(月の裏まで)素晴らしい。
- アルゴ(原題:Argo/監督:ベン・アフレック)
- マンイーター(原題:Rogue/監督:グレッグ・マクリーン)
- グレッグ・マクリーン5年前の監督作。人喰い映画マニアのおれが言うのもなんだが、人喰い映画とは思えないほどに格調高い良質なワニ映画。サイズも食欲も一級品。
- メランコリア(原題:Melancholia/監督:ラース・フォン・トリアー)
- いきなりキルスティン・ダンストのドアップから始まり、予想外にでかいキル乳のご披露といい、テーマ強調のためにしては過剰すぎるスペクタクルといい、すべてがおれのためにあるような映画。
- 預言者(原題:Un prophète/監督:ジャック・オーディアール)
- 痛くて、苦くて、熱くて、空虚。監督曰く「『スカーフェイス』の対極に位置する映画を作りたかった」とのことで、その目論見は達成された。映画史に残る傑作が生まれたと確信する。
- コーマン帝国(原題:Corman's World: Exploits of a Hollywood Rebel/監督:アレックス・ステイプルトン)
- 三流人喰い映画を愛する者として絶対に足を向けては寝られないロジャー・コーマン大先生のドキュメンタリー。終盤、コーマンの偉業に対してアカデミー功労賞が贈られるシーンに涙する。彼の生涯を肯定することは、自分の生涯も肯定されることだ。おまけにエンドロールでは、彼が撮ってきた膨大な作品群の中からとくにゴキゲンな映画の、最高にゴキゲンな曲が流れて、後味も素晴らしい。
年内中に見損ねた映画はたくさんあるが、なかでも悔やまれるのは『ボーンズ・ブリゲード』と、『レミントンとオカマゾンビの呪い』と、侍編集チョが2位に推してる『私が、生きる肌』。これらは見ておきたかったな。
とくに(スケートチームの)ボーンズ・ブリゲードはおれも大好きで、ツイッターでもつぶやいたけど彼らが主演のロードムービー『The Search for Animal Chin』(1987)がとにかく傑作なんだ。字幕ナシでよければ、YouTubeで全編丸ごと見られる。どうせたいしたセリフは喋ってないし、中学レベルの英語力があれば問題なく理解できる程度の内容なので、みんな見るべきー!
Bones Brigade 'The Search for Animal Chin' (1987)
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2012/10/05
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