特別公開『1978〜2008☆ぼくのゲーム30年史』第0回

 現在、ぼくが「水道橋博士のメルマ旬報」に連載している『1978〜2008☆ぼくのゲーム30年史』は、タイトルが示すように、ぼくがテレビゲームと出会ってからの30年間を振り返る自分史です。現時点で第5回まで掲載されています。

 誰が読んでもおもしろいものになっているかは自分では判断できませんが、少なくとも日本のゲームの黎明期の一側面を記録した重要な文章ではないかと自負しています。

 優れた書き手たちが名前を連ねる「メルマ旬報」に連載を持たせてもらえているのは非常に光栄なことですが、有料のメールマガジンということもあって、会員登録をしなければ読むことはできません。

 おそらく、連載していることは知っていても会員登録はせず、「いずれ単行本になったら読もう」と思っておられる方も多いのではないでしょうか。たしかに、これの前に連載していた『レコード越しの戦後史』は、連載前から書籍化することが決まっていました。けれど、この『1978〜2008☆ぼくのゲーム30年史』は、いまのところ書籍化の予定はないのです。

 そこで、新たな読者の獲得を目指すことと、書籍化してくれる版元さんを募集するという二つの意味を込めて、前書きに相当する第0回「はじめに」と、第1回「見返りのないおもしろさ」を、このブログで公開することにしました。

 とりあえず今日は第0回「はじめに」を公開します。

 

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00 はじめに

 これから壮大な“自分語り”をしようと思う。

 とはいえ、ぼくが自分の人生を漫然と綴ってみたところで、とみさわ昭仁に興味のない人(人類のほとんどは興味ないだろう)にとっては、まるで意味のない文章になってしまう。だからテーマを限定する。それは〈ゲーム〉だ。

 ここでいう〈ゲーム〉とは、よりわかりやすく言えば「テレビゲーム」のことだ。一般的に、ファミコンプレイステーションといった家庭用ゲーム機をテレビにつないで遊ぶもののことを「テレビゲーム」と呼ぶ。それに対して、ゲームセンターのゲームは「ビデオゲーム」、パソコンで遊ぶものは「パソコンゲーム」と呼ばれるが、ここでは便宜上、それらすべてをひっくるめて〈ゲーム〉と表現する。また、トランプや花札、麻雀、ボードゲームといった非電化ゲームも登場するが、それもまた〈ゲーム〉に含まれる。

 ぼくがどのようにゲームと出会って、どのように遊び、どのように批評し、どのように作ってきたか。これからそれを書いていくわけだが、ご存知ない方のために手前味噌ながらぼくの経歴を簡単に説明しておきたい。

 フリーライターのぼくが、仕事で取り扱う分野のひとつに〈ゲーム〉を加えたのは、1986年のことだった。ちょうどファミコンブームが起こり始めた頃で、ゲーム専門誌というものが乱立しつつあった。そこでゲームライターとしてたくさんのゲームの紹介記事を書いた。自分に才能があったなどと言うつもりはない。ただ、幸福なことに人脈に恵まれたので、いろいろな媒体から声をかけてもらった。当時出版されていたほとんどすべてのゲーム雑誌で、原稿を書いたと言ってもいいだろう。つまり、ぼくはゲームマスコミが誕生し、成熟していく過程を見てきたわけだ。

 ゲームライターとして仕事をしていくうちに、いまのゲーム界を支える重要な人物たちとも出会うことになった。『スーパーマリオブラザーズ』の宮本茂氏、ゲームボーイを作った横井軍平氏、若くして亡くなられた任天堂元社長の岩田聡氏、『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏、『桃太郎電鉄』のさくまあきら氏、そして『ポケットモンスター』の田尻智氏──。

 一介のゲームライターだったぼくは、やがてゲームの開発者にもなっていくのだが、上に挙げた人たち(偉人といってもいい!)の全員と一緒にモノ作りをしたことのある人間なんて、おそらく世界でもぼくだけではないかと思う。ぼく自身は天才でもなんでもない凡人だが、天才と出会ってしまう才能だけはあったようだ。

 さて、そんなぼくが見てきたゲームの歴史。これから書くものは、ぼくの自分語りでありながら、それが図らずも日本のゲーム業界の、かなり重要な一部分を記録したものになるだろうとの予感がある。

 

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 明日は第1回「見返りのないおもしろさ」をアップする予定です。今回、快くブログへの転載を許可してくれたメルマ旬報編集部には心より感謝します。ありがとうございました。

水道橋博士のメルマ旬報