13 飲尿療法とカンパの古本と謎の鉄パイプ

2013年3月マ日

 かつて「飲尿療法」という民間療法が流行ったことがある。1990年に『奇跡が起きる尿療法』(中尾良一/マキノ出版)という本が刊行されて、広く世間に知られることとなった。飲尿、ようするに自分の尿を飲むことで体内がデトックスされ健康に……とかなんとか。

 常識で考えて、自分の尿を自分で飲むだけで健康になれるなんて、そんなワケあるか、バーカバーカという案件なんだが、なぜか流行ってしまって、けっこうな著名人でも実践している人がいた。

 その昔「伊藤つかさの尿なら飲める!」と言った奴がいた。ぼくは誰の尿なら飲めるかな~? デビュー当時の山瀬まみだったら飲んだかもしれない。でも、せっかくプリン体を排出した自分の尿を、なんでまた自分で飲まなきゃならないのか。

 飲尿療法のような医学的根拠のないものには否定的なぼくではあるが、古書マニアの立場からすると、それらについて書かれた本には俄然興味が出てくる。以前から、古書市などで見かけるたびにコツコツ仕入れをしており、いまでは10冊近くの在庫がある。

 尿の本が日本一揃っていることでお馴染みのマニタ書房、本日もオープンしました。

▲『尿を訪ねて三千里』なんて最高のタイトルじゃないですか!

2013年3月ニ日

 デイリーポータルZの林雄司さんがご来店。「Webやぎの目」の頃から気になっていた書き手であり編集者でもある人物だが、じつはお会いするのは今日が初めて。マニタ書房という店をきっかけにして、会いたかった人に会えたりするのがとてもおもしろい。店を始めてよかった。

 

2013年3月タ日

 高校時代の後輩のムトーが、30数年ぶりに会いに来てくれた。いまはビニール加工をする町工場の社長である。懐かしい話をいろいろ。

 そして、今日は店を閉めたら下北沢へ遊びに行く予定。いよいよ駅前再開発が本格化するにあたって、小田急線の地下化が始まる。あの有名な「開かずの踏切」がなくなるというので、下北沢で出会った仲間たちと集まって踏切の最後の姿を見て、惜別の宴を開催するのだ。

 下北沢は亡き妻と出会った街でもある。今日はいろいろな時間が巻き戻される日だ。

 

2013年3月シ日

 自分のノルマとして予定していた原稿は、1本目を7割ほど書いたところでタイムアップ。でも難所は抜けたからいいのである。それに、今日はお客様も多く、本をたくさん買っていただいた。限りなく赤字に近い店だけど、古本屋とライターという二本立てで商売をしていると、精神的にラクなのだ。

 ツイッターを見ていたら、友人がマニタ書房で買った本の写真を上げている。そして、そのツイートを見た別の友人が「あ、それオレが開店のときにプレゼントした本では?」とコメント。わはは、友人の本が友人間でぐるぐる回ってる。

 マニタ書房は、開業パーティーのとき「お祝いはいらないけど、不要の本があったらカンパして」とお願いしておいたら、集まってくれた友人たちがたくさん本を置いていってくれた。で、当然それらには適当な値段を付けて店頭に出しているわけだが、その気になれば後日来店して、自分が置いていった本にとみさわがいくらの値段を付けたか見ることができてしまうのだ。「オレがただでやった本にそんな値段を付けやがって、あのボッタクリ野郎!」……っていう地獄絵図がぼくを待っている。

 

2013年3月ヨ日

 マニタ書房はとにかくよく揺れる。

 自宅では地震以外では家が揺れることはないので、地震があったときはすぐに「地震だ!」とわかる。ところが、神保町のマニタ書房は白山通りを大型トラックが通るだけでもすごく揺れるので、毎日のように「地震かしら?」となっている。細長いビルの4階だから余計に揺れを感じやすいのだろう。

 うちの物件は、白山通りに面した側の柱に謎の鉄パイプが突き出ている。なんのためにあるのかさっぱりわからない。他にも洗面所の窓にも鉄骨が斜交いで突き出ていたりして、一応の耐震設計はされているようだ。

▲謎の鉄パイプ