42 床寝りと5年後の味と鹿児島ツアーと

2015年8月マ日
 店に出勤したが、あまりの暑さで仕事をする気力が出ないので、とりあえず店の床で横になる。お客さんが階段を上がってくる足音が聞こえたら飛び起きられるよう、入口ドアの前で寝っ転がってるが、この状態で寝落ちしたら入ってきたお客さんはビックリよね。

▲パンチカーペットは案外寝れる。

 

2015年8月ニ日
 マニタ書房ではなく、ライター業の話。
 自分はいま幸福なことに一次創作の機会を与えられているんだから、周りの声や評判に左右されず、いま自分にできることを全力でやるべきなのだ。評価は後からついてくる。
 それに、発表直後の評価は意味がない。5年後、10年後、あるいは100年後にどう評価されているかが大事。だから自分が生きているうちに酷評されようとも、そんなことは知ったこっちゃないと、口笛を吹いて前へ進もう。
 ぼくは昔から「これは5年後にいい味が出る」とか「10年続けたらおもしろくなる」とか、そういうふうに物事を見てきたので、そんなぼくがいま古本屋(古物商)をやっているというのは、我ながらおもしろい終着点だと思う。そして作家としての自分も、そういう物の見方に耐えられるような活動をしていきたい。

 

2015年8月タ日
 錦織圭選手(の名前)を見ていて、これを「にしきおり」でなく「にしこり」と読むのは、Maneater(マンイーター)を「マニタ」と読ませるのと同じだなあと思った。

 

2015年8月シ日
 8月17日から20日まで娘と一緒に鹿児島ブックオフ仕入れツアーをやってきた。娘と一緒なのは、中学卒業と共に鹿児島へ引っ越してしまった親友に会わせるため、夏休みを利用して同行させたのだ。
 収穫だけを要約すると、回ったブックオフは「鹿児島国分店」「鹿児島加治木店」「鹿児島天文館店」「鹿児島串木野店」「川内店」「鹿児島出水店」「熊本水俣店」「鹿児島大口店」「鹿児島荒田店」「鹿児島唐湊店」「鹿児島ジョイプラザ店」「鹿児島中山バイパス店」「鹿屋寿店」の13軒で、仕入れた本は合計29冊。
 仕入れ旅としては少なすぎる結果だが、まあ今回は娘の思い出作りの側面が大きかったので、これでヨシとしよう。

ブックオフ鹿児島出水店。

 

2015年8月ヨ日
 ツアーの最終日は、鹿児島県薩摩半島の南端にある指宿(いぶすき)に来た。何をしにこんなところへ来たのかというと、それは幻の珍盤『イッシー音頭』を探すためである。
 こういうものは都内の中古番屋にはまず出てこないが、地元(この場合は鹿児島県指宿市)の古道具屋などをこまめに回れば、意外にあっさり出てくるのではないか? そう思って旅行ついでに指宿にも立ち寄ったのだが、あいにく古道具屋巡りまでしている時間はなく、池田湖周辺の土産物屋を回ることくらいしかできなかった。
 しかし、池田湖畔の土産物屋にはどこにでもあるような茶碗だの置物ばかりで、レコードはおろかイッシーグッズすら売ってない! 薩摩黒豚をキャラ化したアーモンドクッキーなんか売る暇あったら、イッシーせんべいとか作ればいいのに……。

▲後にある人物の好意で入手は果たした。

 ちなみに、今回の鹿児島&熊本ツアーで13軒のブックオフを踏破したことにより、総訪問支店数は486となつた。県単位で制覇したのは岩手、群馬、茨城、埼玉、千葉、東京、石川、山梨、宮崎、鹿児島、沖縄の1都9県である。

 

2015年8月ボ日
 江戸川区の松江図書館より講演会の依頼。何を話すかあれこれ考えた挙句、「出張!古本“珍生”相談 ~本の数だけ人生はある~」と題して、ナビブラ神保町で連載中の「古本“珍生”相談」をライブでやることにした。
 もちろん、その現場で相談を投げかけてもらい、それに古本で即答するのは物理的に不可能なので、事前に募集しておいたご相談に適した古本を選出し、その解説をライブで行なうという趣向である。
 結局、30名限定の会場はほぼ満席で、ご来場のお客様方にも楽しんでいただけたようで何よりだった。

 

2015年8月ウ日
 鹿児島ツアーで仕入れ、現地から宅配便で発送しておいた本が到着したので、朝からドバドバと品出しをする。これにともない、レジ下の棚に新入荷の本を置くコーナーを作る。