11 セカンドライフとブックオフとトイレの問題

2013年1月マ日

 マニタ書房を開業して初めての新年である。新年早々ブログを更新。マニタ書房としての公式ブログは作っていないのだが、とみさわ昭仁個人としてのブログ「Pithecanthropus Collectus(蒐集原人)」に、マニタ書房の概要という記事をアップした。ここに「店の地図」と「主な取り扱いジャンル」と「古本以外の商品」と「営業時間」と「買い取りについて」の説明を書き連ねておく。ここを見てもらえばマニタ書房というのがどういうところか一目瞭然、というわけだ。

 ちなみに、初夢は「行きつけのブックオフに行ったら隣の公園で中古レコード市をやっていて、あんまり期待しないでエサ箱を漁ってみたらどこかの覆面歌手コレクターの処分品がごっそり混じっており、見たこともないような覆面歌手とか、バットマン(覆面ヒーロー)のパロディレコードとか、ぼくの知らないレコードがドサドサ出てきて狂ったように買い漁る」という夢だった。「これは夢じゃなかろうか!?」と驚いて目が覚めたわけだが、もちろん夢だ。かなりの重症である。

 

2013年1月ニ日

 いますぐ売り上げにつながるとは思えないが、10年後くらいにいい味が出てくるのではないかと思って密かに集め始めているのが「セカンドライフ」の解説本だ。セカンドライフ、わかりますかね? ウィキペディアには「3DCGで構成されたインターネット上に存在する仮想世界(メタバース」と書かれている。インターネットバブルよ再び!とばかりに、いろんな企業が仮想空間内に店を出したりして、なんとなく話題になったり、ならなかったり、派手にラッパを吹いたはいいものの、実際に聴こえてくるのは閑古鳥の鳴き声だけだったりする、あの空間。

 こういう新しいムーブメントがあると、それの是非や成功の可能性はさておき、まずはガイドブックや攻略本が作られる。そういうものって、時間が経つとどんどん情報が古くなるのは当然で、情報が古くなるだけならまだしも、そのサービスが不発に終わると、それらのガイドブックはまるでオーパーツのような輝きを放ち始める。いま『NIFTY‐Serveイエローページ ’96』とか新品で出てきたら化石でしょ。逆にプレミアが付く。

 で、いま(※2013年)は、ちょうどセカンドライフのガイドブックが、まったくなんの役にも立たず、でも化石になるほどには熟成されておらず、古本市場では二束三文でごろごろしてるという状態。マニタ書房では、そういうものをコツコツと掘っていきたいわけですよ。

 さすがに「セカンドライフ」という仕切り版を作るのは時期尚早だけど、とりあえず集めた5冊ほどのセカンドライフ本は「パソコン」の棚に並べてある。全っ然っ売れる気配はないけどね。

セカンドライフにはブックオフの支店もあった。行っておけばよかったなー。

2013年1月タ日

 ぼくの読者だという方が遠方よりご来店。『よい子の歌謡曲』の頃から読んでくれているそうだから、かなり長いこと応援していただいているようだ。店内をじっくりと眺めた末、厚めの本をまとめ買いしてくださった。これは本当にありがたいこと。金額の高い本が売れるのもいいけれど、たとえ安くても厚みのある本が売れるのもまた嬉しいのだ。ズバッと空いたスペースに、薄い本ならたくさん補充できるからね。新年、もう少し休んでいようかとも思ったが、頑張って出勤して、店を開けておいてよかった。

 

2013年1月シ日

 自分が行ったことのあるブックオフをチェックするために、公式サイトにある支店のリストをExcelに移している。以前はただ既訪店の名前を箇条書きにしておく程度だったが、それだと全貌が把握できない。まず全体がどれだけあるのかをすべて書き出し、すでに踏破した店舗にチェックを入れていく。これがチェックリスト作りの基本だ。そうすることで、自分がいま全ブックオフ踏破旅のどの位置にいるかが把握できる。……って、おれはいつの間に「全ブックオフ踏破旅」なんてものに出発してしまったのか。だが、やり始めてしまったら止められない。

 北は北海道から南は九州・沖縄まで、日本国内すべての支店に番号を付けて上から並べていく。いずれ訪問するときのために住所はもちろん、駐車場の有無、店舗のサイズを書き込む欄も必要だ。営業時間はほぼすべての店舗が午前10時オープンなので、わざわざ欄を作る必要はないだろう。ごく稀にフランチャイズ店で「午前8時開店」とか「午後23時まで営業」などという店があるので、そういうときだけ備考欄に書いておけばよい。

 あとは「初訪問」と「最終訪問」の日付。これは後々になっていろいろ振り返るときのために必要だ。こういうところに自分のマニアックな性格が反映されている。だが、すべての支店の「標高」まで書き込むのはやり過ぎなのではないか。でも、これをやったおかげで日本一高いところにあるブックオフ山梨県の富士吉田店で、日本一低いところにあるのが愛知県の大治店であることが知れた。知ってどうする。

 日がな一日そんな作業に没頭して、日本全国ブックオフのリストが完成。全894店(当時)のうち、167店を訪問済みであることがわかった。過去の日記からのピックアップ漏れがあるので、おそらく実際には175店くらいは行ってるはず。これから先、マニタ書房の仕入れという名目であちこちのブックオフへ行くことになるだろうから、この訪問数は加速度的に増えていくはずだ。実に楽しみである。

 

2013年1月ヨ日

 昼。弁当の用意がないので、店を10分だけ閉め、ダッシュで近所の蕎麦屋へ行ってイカ天そばを食う。たった一人で店を運営していると、このように食事ひとつするにも苦労する。いや、食事以上に重要なのがトイレである。

 以前、せんべろ古本トリオで国立周辺をツアーしていたときのことだ。とある古本屋の戸をガラリと開けたら、パニクった表情の店主に「すみません、トイレに行きたいので10分後にあらためて来ていただけませんか?」と言われたことがある。あのときは笑ってしまったな。せんべろ古本トリオのツアーは古本屋と酒場をハシゴする旅なので、「じゃあ、このタイミングでガソリンを入れに行こう」と、近所にある餃子の満洲に入り、ビールを飲みながら時間を潰したのだった。

 マニタ書房は、そう頻繁にお客さんが来る店ではないので、トイレに行くタイミングが取れなくて困るということは滅多にない。ただ、酒飲みの常としてぼくはお腹が緩みがちだから、お客さんがいるときに便意を催すという危険はある。いつだったか、お客さんが長居しているときにお腹がくだり始め、心の中で(買うにせよ買わないにせよ早く退店し!)と念じていた。ようやく何冊かの本をレジに差し出されたので、(やっとトイレに行ける!)と感謝しながらレジを打っていたら、トントントンと次のお客さんが階段を上がってきてしまった。万事休す。まあ、入店したばかりのお客さんはしばらく棚を眺めているだろうから、バックヤードへ本を取りに行くようなフリをしてトイレに入ってウンコしましたけど。

 

2013年1月ボ日

 マニタ書房もいちおうは実店舗なので、店の固定電話くらい引いておくべきなのでは? と思ったりもしたが、少し考えて、電話で在庫を問い合わせてくるような人はうちの客じゃないな、と思って引くのをやめた。何があるのかは店に来てからのお楽しみ。マニタ書房はそんな場所でありたい。