20 本の雑誌と安達祐実と蒐集100万年

2013年10月マ日

 先月、かつて「週刊プレイボーイ」誌で編集長を務めていた島地勝彦さんの取材を受けた。氏が「月刊リベラルタイム」で連載している「ロマンティックな愚か者」という記事に、マニタ書房の店主であるぼくが取り上げられたのだ。自分で言うのもなんだけど、赤字覚悟で半分道楽みたいな古本屋をやっておやじを「ロマンティックな愚か者」とは言い得て妙である。

 ライターとしてのぼくは「週刊プレイボーイ」とは縁がなく、これまで(そしておそらくこれからも)原稿を書くことはなかったが、島地さんは「週刊プレイボーイを100万部雑誌に育て上げた男」として、業界で名を知られる人物だ。そんな方がマニタ書房に注目してくださるというのは、実に光栄の極みである。

 掲載誌「月刊リベラルタイム 11月号」は2013年10月03日発売

 

2013年10月ニ日

 数年前から温めているアイデアがある。オリジナルのスカジャンのデザインで、どこか作ってくれるところはないものだろうか? こちらで用意したデザイン画をそのまま刺繍してくれるところはあるが、できれば生地から選択できるところがよい。セミオーダーってことになるのだろうか?

 ※と、以前からぼんやりと考えていたアイデアが次第に明確な形として見えてきたので、この日に上記のようなことをTwitterでつぶやいた。ここから半年後に、ハードコアチョコレート代表のMUNEさんに相談したところ、その場で制作が決まったのだった。これが後のナスカジャンになるのである。

 

2013年10月タ日

 ただいま発売中(※2013年の話です)の「本の雑誌 11月号」に、「マニタ書房の作り方」というエッセイを寄稿している。ぼくがなぜ古本屋を始めようと思ったのか、そして実際に開業するうえでのノウハウなどを語っているのだ。

 ぼくは椎名誠さん直撃世代で、『さらば国分寺書店のオババ』とか『気分はだぼだぼソース』とか『もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵』とか、すべて貪るように読んだ。なかでも『哀愁の町に霧が降るのだ』は、まだ何者でもなかった若者たちの群像劇として自分を重ね合わせながら繰り返し読んだものだ。

 それから数年後、「よい子の歌謡曲」への投稿から編集スタッフを経て、フリーライターになった。「よい子」編集部では、発行人の加藤秀樹くんから「よい子が地方へ販路を拡大できたのは、目黒孝二さんに地方・小出版流通センターを紹介してもらったからなんだよ」と聞かされて感動したものだ。

 そんなぼくなので、「本の雑誌」に原稿を書かせてもらえるようになったのは、なんというか非常に感慨深いものがある。

 椎名誠さんといえば、あるとき丸ノ内線に乗り込んで、ふとドア上を見あげたら、椎名誠さんが出ているサントリービールの広告が貼ってあった。「椎名さんすげえなあ、本も売れまくってるし広告にも出てらぁ」なんてぼんやり考えていたのだが、次の駅に着いたらそのドアから椎名さん本人が乗ってきて、ぼくの真正面に立ったことがあった。思わず広告と本人とを交互に見ちゃったよ。

 

2013年10月シ日

 皆さんご存知のように、ぼくは一般の古書コレクターが求めるような貴重本には興味がない。そういう本は古書市では特別な存在として、棚挿しではなく、面出し(表紙をお客様のほうへ向けて展示)されていることが多い。でも、そういうのには目もくれず、ぼくはあくまでも棚やワゴンの中だけを漁る。そういうところには、古書マニアがクズ本と切って捨てるような本ばかりが埋もれている。でも、そんなクズ本の背表紙を必死に目で追っていると、ときどきキラリと光るタイトルと出会うことがある。

 どうでもいいビジネス書に紛れた『安達祐実になれる本』というタイトル。おやおや? と思ったね。

 でも、安心するのはまだ早い。いくらタイトルがおもしろそうでも、棚から引き抜いて表紙を見たらまるで魅力的じゃなかったり、あるいは表紙がそこそこ魅力的でも、中身はすごくつまらない切り口の本だった、ということはよくある。その善し悪しの基準はひと言では語れないけれど、毎日ものすごい数の古本を見ていると、そういうのがだんだんわかるようになってくる。

 で、この本を棚から引き抜いたら、こんな表紙だったわけだ。

針すなお風の似顔絵がいい味。

 これを目にした瞬間、この本がどういう素性のものかわかった。だって芸能人のことを書いた本なのに、その人物の写真が使われていないのだ。つまり、これは「安達祐実の人気に便乗して勝手に出しちゃった系の本」ということなわけで、そういう本は大好物である。

 気になる内容は、人気子役である安達祐実の魅力を紹介しつつ、「子役とはどうあるべきか」を語り、「子役の仕事のいろいろ」を解説し、「オーディションの必勝法」を伝授し、最後には「子役のための養成機関」や「事務所の一覧」まで掲載している。なーるほど、これはまさしく「安達祐実になれる本」だ。というか「うちの子を安達祐実にする本」ですね。

 

2013年10月ヨ日

 念願だった古本屋を始めて、一年が経過した。この日は「マニタ書房 開業1周年記念パーティー」である。まあパーティーといっても昨年のオープニングと同じく、狭い店内でお酒を飲みながら営業するだけのことだが。

 11:00~20:00くらいまで店を開放し、店内ではBGMにシーパンクを流しながらビールなど飲んでいるので、誰でもウェルカムである。

 ※この当時、ぼくは夢中になってシーパンクばかり聴いていた。

 

2013年10月ボ日

 ぼくがフリーライターとしてデビューした日を、いつと認定するか? 同人誌(よい子の歌謡曲)はさておき、初の商業誌デビューが1984年1月10日刊行の『ザ・シングル盤』(群雄社)なので、来年の1月でちょうどデビュー30周年ということになる。

 そこで、新宿ロフトプラスワンにて、とみさわ昭仁デビュー30周年記念イベント「蒐集100万年」を自分で企画して自分で主催することにした。ゲストにせんべろ古本トリオの安田理央柳下毅一郎、コレクター友達の石川浩司、『人喰い映画祭』の装画でお世話になった寺田克也(以上敬称略)を招いて、愉快なトークを繰り広げる予定。皆さんお誘い合わせのうえ遊びに来ていただきたい。

▲わざと寝癖のある写真を選んだのだが、うまく伝わらなかった。

 ※当然ですが、イベントはもう終わっています。